恋人はトップアイドル
Ⅲ.Two Years ago ─恋の炎に身を焦がす

お泊りデート

「入って。」

「お邪魔しまーす、てすっげえなおい・・。」

玄関を開けた瞬間、輝は呆気にとられた表情を見せた。

輝もこういうときは普通の反応するんだ、と思ったら、なんだか嬉しかった。また1つ、新しい発見だ。

「待ってね、今お茶入れるから。」

でもなんだか、輝が家にいるって・・変な気分だなあ。

「あ、コーヒーの方が・・って、座ってていいよ?」

振り向いたら、オープニングキッチンの前に輝が立っていて、胸がドキッとした。

輝は最近、すごく優しく笑ってくれる。愛を感じることが、すごく嬉しいけど、恥ずかしくもある。

「ここでお前を見てるほうがいい。」

「・・そう、なの?」

「ああ。俺、コーヒーがいいな。」

「あ、うんっ。今入れるね。」

輝が同じ空間にいる。しかもものすごくプライベートな空間に。
どうしよう、すごくドキドキしてきた。

「しっかしお前・・こんな広い家に住んでんのか。」

「うん、まあね。みんなに贅沢だってよく言われる。」

あたしは苦笑した。

「母親は?」

「アメリカに行った。」

「は?」

「仕事でね。お父さんが死ぬ直前までやってた仕事を、お母さんが引き継いだの。だから・・1ヶ月くらいかな、一人だよ、今は。」

「なんで言わねえんだよ。」

輝の声が少し不機嫌になって、振り向いた。

やっぱり少しふてくされている。

「ごめん・・、なんだか言うタイミング、失っちゃって・・。」

「・・たくお前は。本当強がりなのな。」

輝が呆れたように笑った。
仕方ないな、って甘やかしてくれてるみたいで、安心する。

「でも・・支障はねえのか?一人だと・・、危なかったりしないのか?」

「あ、それは大丈夫。セキュリティーついてるし。掃除は・・まあ、広くて出来てないけど料理とかは平気だし。」

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