恋人はトップアイドル
「わかってるってば。」

「そう言って全然しねえだろ。」

「もー、忙しいの。」

「輝さんてば、いつまでも、小夜が大好きなのね。」

それを見ていると、英恵さんが楽しそうにそういった。

「ばっ、んなわけねーだろ!」

すると、輝は照れ臭そうに顔をしかめて、そう言い放った。
なんだか過剰な反応の仕方に、違和感を覚えた。

そして思い出した。

前にも、輝が不可思議な反応をした時があった。
社長に、あたしのことを言いに言った時だ。

「小夜がいるからな。」

「あいつの名前を出すな。」

輝の、あの怖いくらいの怒りは・・、小夜さんの名前に反応したからだったはず。

その小夜さんは、この人---??


そう考えると、違和感が拭えなかった。なんだろう、正体がわからない。

でもあたしは小夜さんを、「好きな人のお姉さん」には、なぜか思えなかった。
どうしてか、今までになく、怖い存在に感じた。あたしを不安にさせる存在に思えた。


なんでだろう。
あたしってば、嫌なヤツだな・・・。

「本当に忙しいだけなの。心配しないで。連絡するからさ。」

「・・わかった。じゃあな。あ、英恵さん、小夜を甘やかすなよ。付け上がるぞ。」

「なによそれ!」

どうして、輝は小夜さんを、お姉さんなのに小夜と呼ぶのか、それもわからない。

「行こう優美。」

「あっ、うん。」

いきなりのことに、うまく笑えず頷いた。

「じゃあな小夜。」

「仕事頑張りなさいよ。」

「ああ。」

「英恵さんも。」

「ええ、また。」

「お世話になりました。」

ペコッと頭を下げた。
小夜さんにも、目を合わせて、軽く会釈すると、微笑んでくれた。

その時思った。

あまり、輝に似ていない---。


違和感は募るばかりで、車に乗った。


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