恋人はトップアイドル
「輝となら噂になってもいいけど。」

「・・冗談言うな。とにかく無理だ。」

ユキはいつも嘘か本当かわからないことを、平気で言う。そのたび、それを断るのが面倒くさい。

「じゃあまた今度ね。あ、あと、今度の撮影の時ツアーのチケットちょうだい!」

「ああ、気が向いたらな。」

「もー、またそんな風にいう。」

「嘘だよ、やるよ。」

「ふふ、ありがと!じゃあまたね、ご飯ちゃんと食べなさいよ?」

ユキは華麗に微笑んでから、楽屋を出て行った。

この業界に入ってから、もう結構色々なタレントやら女優を目にしてきているが、その中でもユキは断トツに綺麗だ。だからといって女としての興味はねえが、見ている分には気持ちがいい。

チケット・・、社長に頼まねえとな。


明日からリハーサルが始まる。当分はそれ一本だ。

そういえば、今日パンフレット撮影の時に来てた女・・、あいつらも明日来るんだろうな。

なんでファンなんかをスタッフに入れんだよ。社長の意図が理解できねえ。

しかも通しスタッフだ。女で、しかもファン上がりの奴らが仕事こなせんのかよ。


まぁ仕事ができなかったら・・、追い出すまでだな。










そしてリハーサル初日。
俺達は、もう組み立てられたセットの上にいた。

今までとハコのでかさが違う。だからセットもだいぶ大規模なもので、一つ一つ、足場を確かめるように確認をした。

空気から、見える客席の多さから何から、全てが違う。

ここに実際に人が入ったらと思うと、武者震いがしてきた。


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