恋人はトップアイドル
手渡されたご飯を食べるのも忘れて、あたしはそれを見直した。
すると。

「ひゃっ。」

ふいに頬に冷たい感触が伝わった。びっくりして、肩を揺らす。後ろを見れば、いつものクールな表情(かお)をした輝が立っていた。
やっぱり、これだけ近くで見ると、ドキッとしてしまう。綺麗な顔立ちしてるから。

「輝・・。な、なに?」

あたしは頬に当てられたペットボトルのお茶を受けとった。

輝はあたしの質問に答えずに、イスをまたいで、あたしの隣に座った。

「お前・・弁当食えよ。」

輝は、あたしに渡したのと同じ種類のお茶を一口飲むと、そういった。

「あ、うん食べるよ。」

「疲れ取りたいなら、たくさん食って寝ればいい。とりあえず、こんなもんは置いとけ、今は。」

輝はあたしの手から、リストを奪い去った。そして自分のお弁当を膝の上に広げる。

「ほら、食うぞ。」

「え・・、輝、ここで食べるの?」

「は?俺と一緒に食うのが不満か。」

あたしの質問に、輝が物凄い怖い目で睨んでくる。

「いやいやいやいや!違うよっ!!ただ、いつも楽屋、戻るでしょ?」

輝たちメンバーには、個別に楽屋が用意されている。輝たちはいつも休憩の時はそこに戻っているし。

「今日はここで食う気分なんだよ。とにかく食おうぜ。」

輝はぶっきらぼうに言い放つと、自分の弁当を開けはじめた。
あたしも自分の弁当を開ける。いつもと同じ、どっかの幕の内弁当。

大好きなだし巻き卵を口にいれた。美味しくて、顔が綻ぶ。

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