恋人はトップアイドル
そうやって言葉に出してみると、もっと自分の情けなさが身に沁みた。

申し訳なくて、頭を上げられない・・。

すると、俯いたあたしの耳に、また輝のため息が聞こえた。

やっぱり迷惑なんだろうな・・。


「お前のテンションは本当に読めねーな。」

「え・・?」

返ってきた輝の言葉が少し意外で、思わず顔を上げた。

「お前の思考回路どうなってんだよ。俺がお前のこと迷惑だなんて言ったことあるか?」

輝からそう聞かれて、あたしはぶんぶんと横に首を振った。

言われたことは・・ない。

「だろ?俺は、思ったことは言う。だから、ムカついたらお前に怒鳴るし、仕事上では妥協はしない。でも、それはいいものを作りたいからだ。
別に初心者で素人のお前に、一流みてえな技術求めたりしねえよ。勘違いすんな、アホが。」

・・本当に歯に衣着せないですね、輝さん・・・。

さらにドツボにはまっていく気が・・。

「でも、お前が頑張ってんのは知ってる。」

また俯きかけていた頭が、止まった。

一瞬、何を言われたのかわからなくて、思考回路が停止する。

「お前が頑張ってんのわかるから、お前のこと名前で呼んでるし、お前に怒鳴ったりもする。認めてるから。」

情けないことに、頭を上げられなかった。

いつも怒鳴ったり冷たかったり、優しい言葉なんて一つもくれない輝がくれた、初めての、労いの言葉。

ジワァッと、途端に世界が滲む。泣きたくない。必死で、溢れそうなものを押し止める。


「・・初めは、もし仕事できなかったら追い出してやろうとか思ってたけど。」

うわ、爆弾発言。


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