恋人はトップアイドル
Ⅰ.Two years ago─始まりは冬
あの頃の私が、今の私を見たらなんて言うかな。
馬鹿にされるかもしれない。
少なくとも、あの頃の私は、
今よりもっと日常を疎んでいて、
今よりもっと日常を楽しんでいて、
今よりもっと何かを信じていて、
今よりもっと一直線に歩いていた。
だから、あの頃の私が今の私を見たらきっと、
そんな所で立ち止まってるの?
なんて言うと思うんだ。
世界が狭いから、とか、若いから、とか、
そんなんじゃなかった。
虚しいと、悲しいと、苦しいと、零す回数は、
今よりも断然多かった気がする。
ただあんなに希望に溢れていた日々は、
きっともう、二度と来ない。
失った、わけじゃない。
胸の中に生き続けているから、
こうして今、私がある。
だけど、あの頃の私より、少しだけ大人になった今だからわかることは、
何一つ間違ってなどいなかった、ということ。
あの頃の出会いも、感情も、日々も、記憶も、全て、
私が選び取った道は、
間違いなんかではなかった。
だから、あの頃の私にお礼を言おう。
あの人に、
出逢わせてくれて、
ありがとう。