恋人はトップアイドル
Ⅰ.Two years ago─始まりは冬




あの頃の私が、今の私を見たらなんて言うかな。


馬鹿にされるかもしれない。



少なくとも、あの頃の私は、


今よりもっと日常を疎んでいて、

今よりもっと日常を楽しんでいて、

今よりもっと何かを信じていて、

今よりもっと一直線に歩いていた。



だから、あの頃の私が今の私を見たらきっと、


そんな所で立ち止まってるの?


なんて言うと思うんだ。



世界が狭いから、とか、若いから、とか、

そんなんじゃなかった。



虚しいと、悲しいと、苦しいと、零す回数は、

今よりも断然多かった気がする。



ただあんなに希望に溢れていた日々は、

きっともう、二度と来ない。



失った、わけじゃない。

胸の中に生き続けているから、

こうして今、私がある。



だけど、あの頃の私より、少しだけ大人になった今だからわかることは、

何一つ間違ってなどいなかった、ということ。


あの頃の出会いも、感情も、日々も、記憶も、全て、


私が選び取った道は、


間違いなんかではなかった。




だから、あの頃の私にお礼を言おう。






あの人に、


出逢わせてくれて、


ありがとう。






< 6 / 254 >

この作品をシェア

pagetop