恋人はトップアイドル

近づきたい、君に

「良かったー、終わった・・。」

あたしは目の前に置かれた、新しく作成した予算案を見て、ホッと安堵の息をついた。

「本当、一時はどうなることかと思ったけどな。」

健人が苦笑しながら、肩を鳴らす。

「でも、健人が気づいてくれなかったらもっと大変なことになってたし・・。ありがとね、健人。」

「いーよ、別に。」

ぶっきらぼうな返事が、ちょっとだけ笑えた。

「百合と田中くんもありがとう。わざわざ来てもらって。」

「あたしは大丈夫よ。とにかく大事にならなくて良かったわ。」

「俺も安心しました。ところで会長、これから予備校なんで・・、そろそろ帰っても?」

田中くんの申し訳なさそうな声に、あたしは気にさせないように笑って頷いた。

「うん、ごめんね、こんな時間まで。ありがとう!また新学期にね!」

「はい、じゃあ。」

「またな。」

「またねー。」

田中くんの帰る姿を、百合と健人も見送って、3人揃って椅子の背もたれに背中を預けた。

「はー、さすがに参ったな。」

「今時、パソコンに入れたデータが消えるなんてあんのね。全く誰かしら、ヘマしたの。」

「本当だよねー、なんであたしたちの代だけ消えてんだか・・・。」

今日は色んなことがありすぎて、さすがに疲れた。
しかも輝に秘密知られちゃったし・・。まぁ、言わないって言ってくれたけど。

それにしても。

「健人、百合、本当にありがとう。二人がいなかったらどうなってたか・・。」

実際学校に着いた時には、百合と健人と田中くんの3人で過去の予算を洗い直していてくれた。
しかも百合が運よく、今年の予算案を完全決定する前の、予備のものをノートに記していた。

< 70 / 254 >

この作品をシェア

pagetop