恋人はトップアイドル
何を話しているのかは聞こえない。だけど二人の親密な雰囲気は、遠く離れていても伝わってきた。

まさか、本当に彼氏?なのか?

そんなことを悶々と考えていると、健人が優美の手首を掴んで、二人は門の向こうへ消えて行った。


彼氏かどうかはわからないが、多分いつも近くにはいるんだろう。

当たり前に、手首掴みやがって・・。

苛立ちを抑え切れずに、車のハンドルを殴った。


別にアイツは、俺のもんでも何でもない。

なのに・・・。


日に日に、アイツの存在がでかくなっていく。

もっと、側に置いておきたい。

そんな風にも、思い始めていた。


空席になった助手席を、俺は見つめた。


思えば、女をここに乗せたのは、初めてのことだった。


「やっぱ・・、無視、できねーかもな・・。」


俺は天を仰いで、そう呟いた。

好き、とか、そんな気持ちは知らない。知りたくもないけど・・。

だけどきっと、アイツは俺にとって、初めての、気になる女だ。


俺は小さくため息をついた。


本当に、優太のこと笑えねーな・・。


もう一度、二人が消えていった門の向こうを眺めた。

その門は、なぜかひどく、アイツとの距離を重く感じさせた。

俺と優美は、全く違う場所にいるんだ、と。


それは初めて感じる、得体の知れない、不安感だった。


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