迷宮の魂
彼女の部屋は美幸と同じ棟の一階で、仲が良くなると互いに部屋を行き来するようになった。
遥は別段、莉奈を嫌っているふうではなかったが、彼女の方が遥を苦手なんだと言って避けていた。だから、美幸の部屋に来て遥が居たりすると、自分の部屋に戻ってしまう。
莉奈はしょっちゅう出掛けていたから、島の地理には詳しかった。
昼間の空いている時間に、美幸が島の案内を頼んだりすると、彼女は厭な顔することなく付き合ってくれた。
莉奈ほど美幸の好奇心を満足させてくれる相手は居なかった。
彼女は、自分が知っている限りの噂話を聞かせてくれた。店の女の子の事から、ママの事は勿論の事、他の店の子の噂までしてくれた。今まで、そういう話を聞かせられる相手が居なかったせいなのか、嬉々として美幸に話した。
自然、話が直也の事になった。
「美幸ちゃんも気になるの?」
そう言われて何故か美幸は少し慌てたように、
「変な意味じゃなくて、ちょっとどんな人なのかなって」
「いいじゃん、隠さなくたって。好きになったっておかしくないと思うよ」
好きという言葉が出て来て、あっ、と思った。そういう感情ではないと思うのだが、かと言って100%否定出来るとも言い切れない。何かが喉元に引っ掛かった気分に似ている。
「あの人、私から見てもちょっと気になる存在だもんねえ。歳は結構いってるんでしょうけど、若い子みたいに変にギラギラして脂ぎった所がなくて、なんか渋いよねえ」
話しぶりから察すると、莉奈は気になる以上の好意を持っている様子だ。
「いくつ位なんだろう」
「40はいってないんじゃない」
「ママとはどういう関係なのかな」
美幸は、ちらっと耳にした噂話を持ち出した。
それは、エリーのママが直也と出来ているという噂話であった。