空中少年(Gnawing at this heart)
中身は確実にガリ勉タイプだとしても、見た目は爽やかな好青年。

背が高くて、さらさらの黒髪に、授業中だけかける黒縁の眼鏡も女子受けがいいようだ。


英文に目を走らせながらジンジャーエールを飲む中里の、伏せた目元や細い頬の輪郭や唇を、私はぼんやり眺めた。






いざ課題に取りかかっても、私はほとんど中里の解説を聞いているだけだった。

大事なポイントで私に考えさせて、あとはわかりやすく説明してくれる。
私はそれを整理しながら和訳を書いて、イディオムに線を引いて、設問に答えるだけだ。


ストレートに「教えるのうまいね」と言ってみると、中里ははにかんだように笑った。




ふと、店内を飛び交う声のひとつが耳に入る。

レジのカウンターを見ると、ちょうど店へ入ってきたばかりらしい集団がメニューに群がっていた。


五、六人の、中里と同じ制服を着た男子高生。

その中に、見知った茶色い頭を見つけた。



「C組の奴らだね」


私の視線に気づいた中里が言う。

全員揃ってズボンをだるく腰で穿き、メニューを吟味する声は平均して騒々しい。

小坂のクラスを知らなかったことに、私は今気づいた。
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