雪がとけたら
…三人に緊張が走る中、無遠慮にドアが開く。
「まぁた西君の部屋に入りたびって」
ドアの向こうに立つ春子さんは、腰に手を当てて眉間にしわを寄せた。
「いや~だって西君の部屋居心地いいんだもん。一人部屋だし?」
「春子さんの権力じゃねぇのぉ?」といつものおちゃらけた調子で言う一久。
こういう時だけ、こいつの要領の良さと図太さが役に立つ。
「なに言ってるの。部屋割りは厳選な抽選の結果よ。もう、そんなこと言ってないで、あなた達は部屋に戻りなさい。もうすぐ消灯よ」
そう言う春子さんに、「はぁい」と渋々従うふりをして部屋を出る。
「じゃあな、西」
「またね~」
一久の言葉にドキッとするも春子さんは何も気付いてないようで、西に「おやすみなさい」と言ってドアを閉めていた。
軽く肩を落とし、春子さんに挨拶しながら僕達も部屋に戻る。
春子さんのスリッパの音が段々と遠ざかっていった。
…しばらく声を殺して耳をすませていると、再びスリッパの音が近付いてくる。
ドキドキしながらドアに耳を押し付け、その足音が部屋の前を通りすぎさっきとは反対方向に向かうのを確認する。