スイッチ
そんな事を一人で怒鳴った処で、誰も居ないのだという現実に戻る。
いつもそうだ。何が「家族が待っていてくれるから」だよ。
誰も俺など待っていてはくれなかった。
一人で冷蔵庫から、夕方に急いで入れたのだろう、まだ冷えていないビールを取り出し、スーパーから買ったまま皿にも移さず食べかけた唐揚。いつ煮たのか分らない、鍋に戻された半身だけ食べられた煮魚。
それらをテーブルに手際よく並べ、「ご苦労様!」と言ってみる。
生温かいビールが口に入ると、息がこみ上げてきて、苦しく、涙が流れてきた。
家族が待っていてくれると、期待をした私が悪かったのか?
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