スイッチ
それでも時々、父の夢を見る事がある。 父にしがみつき、母を泣かせる夢。 声が枯れるまで泣いて、母に怒鳴る私。 「お母さん!お父さんを止めてよ!お母さん!」 母は顔色を変えずに、「お父さんが出て行くっていうんだから仕方ないでしょ!」「お母さん!お母さんってば!お父さんが行っちゃうよ!」 泣いて咳き込む私に父は 「真紀、お父さんは真紀の事、大好きだぞ」 そう言って、長い長い坂道を、町に向かって歩きながら、何度も何度も振り返って…。
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