とりかえっこしようよ
 それでも、市役所に勤務しているということが判ったのは一歩前進だ。


 大学3年になった俺は、今まで遊びまくっていた分を取り返すように勉強した。


 北海道に何のコネもない俺が、地方自治体の職員になるためには勉強しかない。



 とりあえず、ありとあらゆる資格を取った。


 人が変わったように勉強する俺を見て、みんなは


「彼女ができて、樹は変わったね〜」


 と噂した。



 都合よく解釈してくれてありがとう。





 4年になった。


 夏休みも採用試験と資格の勉強をしていた俺は、暑くてだるだるになりながらポプラ並木を歩いていた。


 それでも、鹿児島の夏よりはずっと涼しい。


 ヘッドホンからは、リスニングの問題が流れている。



 聞き取りながら何気なく景色を見ていたら、幻覚を見た。


 ストレートロングの黒髪。


 伏し目がちに歩く横顔が綺麗な女の子。


 まさかね。


 こんな時にこんな所へいるはずがない。



 暑いし、いつもひかりちゃんのことを考えていたから、ついにそんなものまで見えたか。


  


< 73 / 200 >

この作品をシェア

pagetop