恋、想い、春の雪

・チュッパチャップスイチゴ味

「さや、羽田野と付き合ってんの?」

机の上に二つ並んだチュッパチャップスを腕組みしながら睨んでいる親友に尋ねてみた。

「イチゴ味かチョコバナナ味か迷ってるの」

さやは真剣に悩んでるらしい。ちんぷんかんぷんな答えが帰ってきた。

「好きな方にすれば」

「しゅりちゃん冷たいっ」

さやは化粧っ気の無い頬をぷぅと膨らませる。長めのショート、焦げ茶の髪がさらりと揺れる。

さやは可愛い。あたしと正反対。

「で、何?しゅりちゃん」

「あんた人の話聞いてなかったな」

こんにゃろ、とおでこをつついてやる。

「だから羽田野と付き合ってるのかって」

「ひろと?なんで?」

それはこっちが聞いてるのですよ、佑海(ゆうみ)紗耶香さん。

「こないだあんたらがデートしてたの見た女子に聞いてくれって頼まれた」

「そんなの直接聞いてくれればいいのに」

こういう時、さやは繊細な女心を分かってないと思う。そういうとこ好きだけどさ、あたしは。

「で?どうなん?」

「付き合ってないよ?ただの従兄弟」

「他のクラスでも噂になってるんよ?よく一緒に帰るし」

「だって同じ家に住んでるし。ひろのご両親まだ帰って来ないから」

それに、とさやは思い出し笑いをする。

「こーんなちいちゃい頃から知ってるんだもん、いくら仲良くても彼氏彼女とか考えられないよ」

“こーんなちいちゃい”と説明するさやの手は十センチ幅。あんたら小人だったんか。

「ひろだってそんな雰囲気無いし〜。優しいお兄ちゃんって感じ?」

私は“可愛い妹”ね、とさやは悪戯っぽく笑う。

……可哀相に、羽田野。あたしは心の中で同情した。

さやは全然気付いてないけど、多分羽田野はさやの事が好きだ。さやはあたしから見ても可愛い奴だ、惚れるのも分かる。

いつもそばに居るのに羽田野の気持ちに気付かないさやと、恐らくさやのために告白しない羽田野。

「……チュッパチャップスイチゴ味」

甘酸っぱいキャンディ。

「あんたたちにピッタリだよ」

あたしはさやからチョコバナナ味のチュッパチャップスを取り上げる。

取られた〜と抗議するさやの額を、イチゴ味のキャンディでこつんと叩いてやった。


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