桔梗の場合。
撮影は順調に進み、あっと言う間に終了した。

「お疲れ様でーす。」

帰りのタクシー内で、さつきさんが興奮した様子で話してきた。

「桔梗ちゃん!監督さんに褒めて頂いたわ!
『次の作品も是非主役に。』って。
どう?やってみない?」

そんなの、やってみたいに決まってる。

「やりたいです。
最近すごくお芝居が楽しい。」

「ふふ。良かったわ。
仕事が楽しいのは良い事よ。
ちょっと前まではモデルしかやらなかったのにね。」

「あは。もったいない事してたなーって思います。
でも今は、色々やってみたいって気持ちでいっぱいです。
去年の夏休みにさつきさんに電話して良かった。」

そう、あの電話から始まったんだ。

一年前の、あの電話。

お兄ちゃんが、柊先生に告白した日の電話――……。

――――――

TRRRRRR、TRRRRRR、TRRRッ

「はい、もしもし。」

「あ、あたし、山茶です。」

「あぁ、桔梗ちゃん。
どうしたの?」
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