【スプリング・ハズ・カム】(BL)
どうしたって変えられない事実
やあ、はじめまして。僕の名前?そんなのあまり関係ないんじゃないかな。だって、もし僕が君にある固有名詞を教えても、君はそれが真実かは分からない。特に、こういう特殊な状況ではさ。君が疑い始めたとしても、僕以外にその真相を確かめることは出来ず、さらに僕が全うな自己保身を持った世俗にまみれた男なら、うんと首を振るしか考えられない。そういう無駄なことに思い悩むなら、知らないほうが幸せってこと。

それより僕が知りたいのは、君が好きな季節はなんだいってことなんだ。この国は四季があって、豊かな自然に溢れているよね。まあそんなこと訳知り顔で言っていても、あまりその知識に長けているわけじゃないんだ。人間っつうのは、自分に必要ない知識っていうのは興味も持たないし、そのままなんともなく生きていけるもんだ。興味を持ったときはもう、それを知る術も時間もどうも取得しにくい。君は知ってる?茄子が出来る季節、苺が取れる季節、ああ、こんなことを言ったら僕の無知を晒してしまうことになるね。恥ずかしい話だ。


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