【スプリング・ハズ・カム】(BL)
彼に出会ったのは高校の入学式だった。

10代後半にさしかかると、男の興味なんてだいたいひとつに収束される。セックスってやつだ。多分女の子も同じようなもんなんじゃないかな。僕は中学のとき、初めて自分の性癖に疑問を持った。よくある話なんだけど、同級生がふざけて持ってきた女の子の裸体に、全く興味も興奮も沸かなかったんだよ。自分の肉体の構造との違いの発見も含めて、流線的な人体構造の美というものは理解出来たんだけど、全く性的興奮っていうのは覚えなかった。むしろ、そういったものを見ながら頬を紅潮させ、真剣で淫猥な目を対象に向けている同級生たちの方に目を奪われた。ひどく衝撃だったね。頭を打ちつけて、正気に戻れと怒鳴りたかったよ。でも、だめだった。身体的にも顕著だった。僕は誰にも何も告げることも出来ず、他人と違う欲望が明るみに出ることを恐れ、孤立した中学時代を過ごした。


そんな誰にも怯えるような暗い生活を送っていた僕だけど、これから始まる高校生活には大きな期待を寄せていた。中学は猛勉強をして、有名私大付属の男子高校に入学することが出来たんだ。何も男子高だから心踊っていたわけじゃないよ。僕は自信があったんだ。誰にも知られず、適当に女や遊びに興味がある振りを、事実が見えない男子高なら可能だろうってね。まあ、少なからず同じ嗜好の生徒もいないかと期待したけれど、そいつを好きになるなんてほとんど天文学的確率でないって、心から他人を好きになったことがない僕は変に諦めてたんだけどさ。



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