涙の重さ
‐通知‐





何もない部屋でひたすら文章と睨めっこ。




肩の凝りも限界に近づいていた。





「だめー、終わらない」




少しずつ肌寒くなり、秋の訪れを世話しなく告げる風が窓の隙間から奈美を包む。



「金沢さん、また中断?」


研究室の奥から声がかかる。


声の主はこの研究室の室長の山本拓真という男。

「山本くん、私には無理よ。これを来週までにまとめるなんて…」




奥からは溜め息と自業自得という言葉が聞こえた。


そうですよ。

自業自得。



今まで資料をまとめなかった私のせいです。






『ヴーヴー、ヴーヴー』


携帯のバイブが着信をしらせ、画面を開くと思いがけない名前が飛び込んできた。





「…誠」



着信が続いても、なかなか取ることが出来ない。


誠、


半年前に別れた人。



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