求愛ラバーズ
LOVE.4.5 -高鳴り-
すれ違う人の殆どから視線を感じる。





泣きじゃくるせいでメイクはボロボロだし、大股でズカズカ歩いてるんだから仕方ない。





コインパーキングに戻り、運転席に乗り込んで声を上げて泣いた。





驚いた、と言うより怖かった。





三井さんの表情も目も声も力も全てに恐怖を感じた。





いざという時の為に武術は一通り習った。





趣味でボクシングジムにも通っていた。





そのお陰で一般女性より力はついた。





なのに、なんにも出来なかった。




捕まれた手を振りほどく事も、押し返す事も出来なかった。





あれが男なんだと思い知らされた。





習った武術もいざという時に役に立たなかった。





いくら力をつけても所詮は女。





男には何をしたって負けてしまう。





車を発進させ、急いで家に帰る。




手首に残る指の跡と温もり。





怖かった――――…なのになんで苦しいのよ。





体が熱くて、ドクンドクンと胸の鼓動が速くなる。





家に着くなり、ただいまも言わずに自室に駆け上がった。




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