出世魚
私のドキドキなんか知らない久江さんは
鼻歌を歌いながら運転する。
「そういえば、橘さんが久江さんに宜しくって。」
「橘…何で美咲のこと知ってんの?」
驚く久江さんに驚く私。
「いや、久江さん待ってる時にロビーで
話しかけられただけです。」
「あぁ、そっか。」
どこか淋しそうな顔の久江さん。
彼女とはどんな関係なのか知りたいけど
そこまで突っ込むほど私だってガサツじゃない。
「キレイな方でしたね。」
「…そう。」
あっきらかにテンションが違う久江さん。
センチメンタル甚だしい。
…黙っとこ。
窓からの景色を眺める事にした。

「美咲…橘と…昔 付き合ってたんだ。」
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