出世魚
なんとなくそんな気がしたから
さほど驚きもしなかった。
「そうなんですか。」
「2年先輩で…俺の教育係だったんだ。」
何で別れたんですか…を聞いていいものか。
しばし沈黙。
「でも他の先輩に盗られて1年で終…みたいな」
「そうだったんですか」
「栗原さんも人のものはとっちゃ駄目だよ」
「え?」
「当事者はいいかもしれないけど、盗られた方は辛いじゃん」
「はぁ。」

奥さんから久江さんを盗りたいと思う私には
今の久江さんの言葉は響かない。
でも同時に、越えなきゃいけないハードルの高さに
気付いた気がした時でもあった。
< 36 / 46 >

この作品をシェア

pagetop