合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
書き直された報告書に確認印を押した。

「やればできるじゃない? なんで最初からこうしない?」

「えっ、まぁ、書こうと思えば書くことはあるんで。でも、以前の部署では、そこまで求められなかったし」

「郷に入っては郷に従え、ってね。開発課に来たからには、ここのやり方に従ってもらうわよ」

「へい、へい」

「ほら、行くわよ。あたしは直帰だけど、あんたは?」

あたしは、スケジュールボードの自分の欄に、『丸菱電気 川崎工場 NR』と記した。

「あ、僕は荷物置きに戻ります。戻り、十八時にしといてください」

この森山昴という男、見かけは軽そうだが、結構芯は太い。

荷物置きに、とか言ってるが、明日の営業の準備をしっかり片付けて帰るつもりらしい。

「「じゃ、行ってきます」」そろって、フロアを後にした。
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