合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
「で、なに? 裕子の話って」

舞子が目を泳がせながら、あたしに尋ねた。

「あんた、ピル飲んでるでしょ。ほら、出して」

あたしは、なるべく無表情を装って舞子に手を差し出した。

「な、何言ってんの?」

「だって、あたしにピル薦めたの、舞子だよ。女が身を守るためには、これが一番確実だって。
でも、あんた、樹と約束したんでしょ。
この同棲で子供が出来なかったら結婚しないって。
いや、違った。
子供が出来たら結婚する、だっけ?」

「やっぱり、シスコンじゃない……」

舞子の眉間に皺がよる。

「樹は悩んでた。子供が出来なかったら、舞子が別れるつもりじゃないかって」

「……」

「やっぱ、図星?」

そうあたしが聞いたとたん、舞子の表情は一変した。

「だって……
裕子だって、知ってるでしょ。
あたしがどんだけ自分を粗末に扱ってきたか。
都合のいい女で居るために、どんだけ傷ついてきたか。
愛される為に、どんだけ犠牲を払ってきたか。
こんな馬鹿女、樹には相応しくない。
実際、ピルを止めたって、子供なんて出来ないかもしれない。
あたしに幸せな家庭を築く資格なんてないんだよ。
あたしと結婚しようなんて、馬鹿げてる。
裕子、あんただって止めるべきだよ」

もう、苦しみを堪えきれない、そんな切ない表情で、目には涙が溢れていた。

「舞子……あんた……そんな風に自分のこと……」

あたしは思わず舞子を抱きしめた。

あたしの腕の中で、舞子の身体は小さく震えていた。
< 161 / 215 >

この作品をシェア

pagetop