合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
「姉貴いくつだっけ?」

「女に歳を聞くか?」

あたしの睨みに怯んだ樹が、そのまま視線を奴らに向けた。

「ま、ちなみに俺は三十二。それでも五つも上だぜ? お前ら何考えてんの?」

「何って、恋愛に歳が関係あるんですか? 柏木先輩は女として、十分魅力的ですよ。好きになったって可笑しくないですよ」

樹が額に手を当て、目を伏せ、微かに身体を震わせている。

こいつ、笑っていやがるな……

あたしは、机の下から、樹の足をヒールの踵でこずいた。

「ま、いいんじゃない? でも、姉貴は年上が好みだと思うけどね」

数少ない、あたしと雅樹の仲を知っている樹が、聞き捨てならない暴言を吐く。

「あんたに、あたしの恋愛嗜好を語られる覚えはないよ」

あたしの殴りかからんばかりの怒りを察して、樹が席を立った。

「ま、そうだね。これはあくまで俺の想像。じゃ、そろそろ行く? 俺もこの後、寄るとこあるし」

あたしは、マンションまで送るという二人を睨みつけ、樹の車に乗りこんでレストランを後にした。

嗚呼、疲れた。

美味しかったけど、疲れた。

別れ際、樹が笑いながら呟いた。

「最後のモテ期到来だな……大事にしろよ」って。
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