フェイクハント
「早瀬、悪いが鑑識の結果が出たから一緒に来てくれないか。一刻も早く犯人を挙げないとな」


 そう云って海人の肩をポンっと叩いた。


「典子、遥、大丈夫か? 帰れるか? 不安だったら涼を呼び出して車で迎えにきてもらえよ」


「ありがとう海人。涼のところ寄るつもりだから電話してみる」


「私は一人で帰れるわ。無能な警察には本当頭くる!」


 遥は海人と篠田を一瞥すると、毒舌を吐いてスタスタと廊下を歩いて行った。

 典子は遥の後姿を見送りながら、暗い表情をより一層暗くさせたが、遥の姿が見えなくなると海人の方に顔を向けた。


「海人、気にすることないからね。遥も気持ちのやり場がなくて、海人に八つ当たりしただけだと思うから」


「ああ……ごめんな典子、もっと早く俺達警察がチェスターを捕まえられてたら」


 海人が申し訳なさそうに云うと、典子は微笑して、小さくお辞儀をし、廊下を歩いて行った。

 そんな海人の肩を篠田はもう一度軽くポンと叩き、典子の姿が見えなくなると、二人は暗い廊下を歩き始めた。
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