フェイクハント
「雪絵、典子、立てる? 祭壇の部屋に戻ろう」


 涼はまだ呆然としていたが、自らの気力を振り絞り、雪絵と典子を支えると、秀樹にも声をかけ、四人で祭壇の部屋に戻って行った。篠田は四人の後姿が見えなくなるのを確認すると、海人に質問した。


「この被害者も早瀬の友人で間違いないのか? 姿が見えなくなった経緯も話してくれ。一体何だってお通夜の時にまで人が殺されるなんて……やり切れないな」



「ええ……。本当にやり切れません。
 被害者の名前は米沢遥、桂田静夫と同じく中学時代の同級生です。今ここにいた四人と私も含めて七人は大人になってからも友人関係です。静夫のお通夜はみんなで手分けして受付やら列席者の案内やら色々と手伝っていました。受付は妻の涼と友人の森岡雪絵が担当し、私と後藤秀樹と米沢遥は列席者の案内やお酒を運んだりしていました。

 そしていつの間にか、私と後藤秀樹は米沢遥の姿がいなくなっているのに気付き、受付をしている妻達に訊きに行きました。もしかしたら、どこかで独り泣いてるのかもしれないと思い、その時はそっとしておくことにしました。

 でも列席者が帰り、私達五人は祭壇のある部屋に集まり、しばらく話していたんですが、時間が経っても米沢遥が戻らないので、さすがに心配になり、私と後藤秀樹と森岡雪絵は手分けして探しました。そして、米沢遥の遺体をここで発見し……。

 妻と桂田典子は、祭壇の部屋で待機していたんですが、森岡雪絵の悲鳴でかけつけたようでした」

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