フェイクハント
 一方、海人と篠田は二人きりで、応接間にある祭壇の前で座り込み、話しをしていた。


「桂田静夫に続いて米沢遥も、例の武器で絞殺とみて間違いなさそうだな。始めの二件だけナイフと弓矢で、後は絞殺か。ナイフと弓矢は本物なだけに、店を特定されやすいと考えたチェスターはリスクを恐れ、ムチで絞殺することに変更したのかもしれないな」


「そうですね。篠田さん、さっき云ってたことなんですけど、ナイフと弓矢の販売店の防犯カメラから割り出した怪しい人物って、素性は分かったんですか?」


「いや、男が二人と女が一人、この三人まで絞られたが、素性や居所まではまだハッキリと分っていない。俺はこの三人のうちの誰かがチェスターだと思うんだが、何で桂田静夫のお通夜にまで現れたのか不思議でならない。今までの犯行は全て、路地や公園、河川敷という全て公共の場所だろ? 今回の米沢遥殺しだけは私有地だ。わざわざ私有地で犯行を犯すなんて、リスクが高すぎるだろ」


「確かに、そうですね。犯人はお通夜の列席者に紛れてたんでしょうか? それとも、お通夜が始まる前に、敷地内に潜んでたんでしょうか?」


 ん〜と唸り声を出し、篠田は眉間に深い皺を作り考え込んだ。
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