フェイクハント
「よさないか吉田! こんな時に! まだ鑑識の調べも何も分かってないんだ、軽率な言葉は慎め!」


 篠田は大声で、吉田という若い刑事を叱り飛ばした。吉田は急に小さくなり、すみませんと云い、部屋をそそくさと出て行った。

 そして入れ違いに海人は部屋に戻ってきた。


「みなさんすみませんね、不愉快な思いをさせてしまって。今日はもうお休みになって下さい。と云ってももうすぐ朝ですが、桂田さん、みなさんを空いているお部屋に連れて行ってもらえますか? 後でまたお伺いすることもあるかと思いますが、警備や捜査は警察に任せて、ゆっくりして下さい」


「はい。この屋敷は空いてる部屋がたくさんありますし、もともと全員泊まる予定だったので。二階にいますので、何かあれば声をかけて下さい」


 篠田は穏やかな表情で、典子に声をかけると、今にも消え入りそうな声で典子は答えた。

 そして、典子に続いて、涼と雪絵と秀樹は二階へ向かった。

 二階も長い廊下があり、階段を上ってすぐの部屋から順に一人一人部屋を案内した。

 しかし、典子は独りになりたくなかったのだろう、小声で涼に「私の部屋に来てくれない?」と云い典子の部屋に連れて行った。

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