フェイクハント

　どうして秀樹は雪絵を怒鳴りつけてたんだろう？　プロポーズを断り続けてたってことは、秀樹は雪絵が好きだったんだ。仲が良くて、一緒に会社を興しても、恋人関係でもなく、二人に彼氏や彼女が出来たという話しは聞いたことがなかったけど。

　涼は不思議に思いながらも典子の部屋に戻った。

　部屋に入ると、疲れが溜まっていたんだろう、典子はベッドに横になり、すやすや寝息を立てていた。涼もいつの間にか、典子の隣りで寝てしまっていた。

　どのくらい眠っていたのだろう？

　部屋のドアをノックする音で目が覚めた。涼と典子は目を擦りながら顔を見合わせると、ベッドから起き上がりドアを開けた。

　すると篠田と下を向いた海人が立っていた。


「お休みのところすみませんね。二人共一緒に居られたんですか。桂田典子さん、申し訳ありませんが、署の方にご足労頂けませんか？」


「えっ？　何で典子だけ？」


　篠田は穏やかな口調だが、その目は鋭く典子を見据えていた。

　そして涼がすかさず早口で篠田に問うた。


「この屋敷に、外から不審者が侵入した可能性は、鑑識の調べでなくなりました。チェスターはお通夜に列席していた人間の誰かだということになります。米沢遥さんの殺害の件について、桂田さんにお伺いしたいことがありますので」


「何で私なんですか？　私は遥を殺したりしてません」