フェイクハント

「どうして、典子が疑われるんだよ！　典子が遥を恨む理由なんてねぇよ！　雪絵を恨むんなら分かるけどな！」


「何よ！　私が悪いっていうの！　ひどいわ」


　秀樹が雪絵を睨みつけ、雪絵は泣きながら秀樹に言い返すと、小走りに階段を降りて行った。

　けれども、涼はわけが分からなかった、何故秀樹はそんなこと云うのだろうと。


「秀樹、今のどういう意味？　何で典子が雪絵を恨むなら分かるなんて云うの？」


「あいつ、ずっと静夫と裏で付き合ってたらしいんだ。典子を裏切りながらな」


「嘘でしょ……。そんな……」


「彼氏もいないのに、俺のプロポーズを断り続けてたから、変だとは思ったよ」


「秀樹はいつそのことを？」


「昨夜……落ち込んでいた雪絵を慰めようと部屋に行ったんだ。その時に雪絵の口から聞いた。だから間違いないよ」


　しばしの沈黙の後、唐突に涼は、はっと顔を上げた。