フェイクハント
 その時、部屋に海人と篠田が入ってきた。


「後は俺達が訊くから」


 篠田がそう云うと、若い刑事と年配の刑事は、部屋を出て行った。


「桂田典子さん、あなたにとって酷な話しになるが、桂田静夫さんと森岡雪絵さんは、不倫関係にあったようだね。森岡雪絵さんのバッグには、手帳が入っていたんだが、桂田静夫さんとの関係が書かれていて、あなたを殺そうと計画していたことが分かったんだ。その際、森岡雪絵さんは、米沢遥さんをカモフラージュに使って、カツラや服で真似て、ビルの屋上から看板を落とし、あなたを殺そうとしたことも手帳には書かれていたよ」


 篠田が云い辛そうに事実を話したが、典子は目を伏せ俯いた。涼と海人と秀樹も、同じように俯き黙っていた。


「本来なら桂田さん、あなたを疑い、取り調べをするところなんだが、チェスターらしき男が見つかってね、今、丁度取り調べが始まったんだよ」


「本当ですか? チェスターは捕まったんですか?」


 篠田がドアを一瞥してそう云うと、涼は椅子から立ち上がり目を大きく見開くと、勢い良く質問をぶつけた。

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