フェイクハント
「ごめんね涼、私ってこんなにも醜いのよ……自分でも嫌になったわ。だからもう私も死ぬしかないなんて考えてたのよね」


「典子は醜くなんかないわよ! 昔から変わらず優しい典子のままだから。死んだらダメ、典子まで死んでしまったら、残されてしまう私や海人や秀樹はどうするのよ」


 涼は掠れた声で叫んだ。

 典子は胸が一杯になり、「ありがとう」と悲しい微笑を見せた。

 涼はしばらくすると、チェスターが犯行を否認していることを典子に話した。


「三件の犯行までは認めたって、私もニュースで見たわ。でもどうして後の三件を認めないのかしらね」


「私は、少しでも罪を軽くするためにチェスターは否認しているんだと思うわ」


「でもニュースでチェスターの人物像を特集してたけど、そんなに頭を使う男には思えないのよね。別の犯人がまだ存在してるって可能性ないかしら」


「確かに、海人から聞いたチェスターの取調べの様子からしても、頑として後の三件だけは、声を荒げて否認しているみたいだし、別に犯人がいるとしたら、その犯人も無差別だっていうことかしら」


「涼、私には後に起きた三件の事件は、無差別な犯行だと思えないのよね。何が? って訊かれても答えられそうにないけど」

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