フェイクハント
「そう……。あっ、お通夜の名簿見せて貰ってもいい?」


 涼は唐突に、典子にお通夜の名簿を見せてと云い出し、典子は訳も分からず面くらいながらも、立ち上がると引き出しから名簿を出してきて、テーブルに載せた。

 涼は名簿のページを開くと、睨めっこをし始めた。


「ねぇ、急にお通夜の名簿なんて、どうしたの?」


 典子はきょとんとした顔をしながら、首を傾げた。


「これよこれ! この中にチェスターの名前があるか調べるのよ! もしなかったら、今捕まっているチェスターは、遥を殺すことは不可能じゃない? だって警察では遥が殺された時、お通夜に来た人以外で、不審な出入りはなかったから、お通夜にチェスターが来ていたんじゃないかって捜査をしてたわけだから」


「成程」と典子は納得し、二人でお通夜の名簿を片っ端から調べた。

 しかし、現在捕まっているチェスターの名前はなく、偽名らしき名前も一切見つからなかった。


「もう一人、チェスターがこの中にいるってことで間違いなさそうね」


「名簿に載っているのは相当な人数だし、海人達警察では調べきれてないのかもしれないわね」


 涼と典子は難しい顔をして、考え込んだ。

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