フェイクハント
 中学時代から涼と夫の海人、静夫と典子、そして米沢遥、森岡雪絵、後藤秀樹の七人は仲が良かった。

 始めは男女の友情だけで、すぐに誰かと誰かが恋愛に発展したというわけではない。



 ――中学を卒業する半年くらい前のことだった。

 涼と典子と遥と雪絵の女四人だけで、好きなタイプの男の子の話しになった時、真っ先に「私、静夫が好きなの」と一番物静かな典子が云いだした。

 それは放課後の教室で、夕日が窓から差し込んでおり、典子の頬を余計に赤く染めていた。その時、活発な私は「私は海人が好きだなぁ」とどさくさに紛れて云ったっけ。

 そして、その頃から誰よりも大人に憧れて背伸びをしていた遥は、「私はクラスの男なんて友達としか見れないな、大人の男がいいよ」と云ったのだ。

 最後に雪絵は秀樹の机を見ながら、「私は秀樹が好きだけど、恋愛に興味ないみたいだしなぁ」と明るく笑っていた。

 それから、卒業式に海人が私に「好きだ」と告白してきて、付き合い始めた私達は長年の交際を経て結婚したのである。

 同じく卒業式の日、典子は自分から静夫に告白して付き合い始め、やはり長年の交際を経て結婚したのだ。

 雪絵と秀樹は付き合うことはなかったが、今では一緒に会社を興す程仲が良いのだが二人共まだ独身である。

 遥はその後、色々な男の人と付き合っていたようだが、特定の人と長く付き合ったという話しは聞かない。今は静夫が社長を務める会社で、静夫の秘書をしている。
 

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