フェイクハント
「私に用件があると?」


「ええ、今私は桂田典子さんの自宅前まで来ています。事件関係者のみなさんが揃われていることは、早瀬から聞いて知っているのですが、奥さん、誰にも云わず、適当に用事を作って玄関前に来てもらえませんか? お話しはそこで」


 涼は怪訝な顔をしながらも了解した。

 そして、応接間のドアを開け、みんなには適当な理由を告げて玄関を出た。

 応接間の窓からは、玄関から自宅の門まで見えない位置にあるので、涼は小走りに篠田が待つ門の前まで向かった。


「こっちです、奥さん」


 門の影に隠れるように立っていた篠田が手招きしている。


「篠田さん、私だけに用とは、どんな内容ですか?」


 怪訝そうな顔で涼に訊かれた篠田は、一瞬話すのを戸惑っているようだったが、深く深呼吸をしてから、ゆっくりと語りだした。
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