王国ファンタジア【氷炎の民】完結編
 ふいに宝珠が輝く。紅くまばゆい輝きが一条空へと放たれる。

「あっ」

 レジィが小さな叫びを上げる。
 光を放ったそれは今は色を失い、ただ透明に輝くばかりだった。

『吸い込んだ命を本来の持ち主に返しただけだ。もっとも救えたのはいまだ若き王のみ。失われた命を取り戻すことはできない。それはこの世を作る理の一つのゆえ。神にすら揺るがすことはできぬこと』

「残りのドラゴンたちはどうなるんだ?」

 森の民の若き青年、アウルが尋ねる。王都を襲ったドラゴンは四頭。それぞれに討伐隊が向かったはずだ。

『あれは、我の分かつ身だ。我のこの姿もしかり。同時に討たれぬ限り我らは滅びることもない』

「なるほど、それでは簡単に倒せないはずだ」

 うなづくサレンスにドラゴンは翠の瞳を瞬いた。

『そうでもない。我らは苦戦していた。あるいは我らは討たれていたかもしれぬが』

 ドラゴンは小さな氷炎の民に瞳を向けた。

『そなたには感謝しよう、氷炎の少年よ。そしてそなたに竜珠を託した若き王に伝えるがよい』

 ドラゴンの身体が今度は虹色に輝きだす。

『そなたらの一族が欲望に塗れるとき、我は滅びの使者として再び姿を現そう』

 虹色の光が四方にはじけ飛ぶ。

『心せよと』

 遠く残響のようにドラゴンの声が言った。
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