王国ファンタジア【氷炎の民】完結編
「お前、あの王様に妙に気に入られていたからな」
「何の心配してるんですか? 王様、男でしょっ!」

 さすがに眼を丸くするレジィ。

「レジィ、世の中にはいろんな趣味の人がいるんだ。見かけだけはお前も可愛い部類だし」
「は? 何、勘ぐってるんですか」 
「勘ぐるも何も、王杖をお前に託すくらいだぞ」

 竜珠が埋め込まれた錫杖。王権の象徴としても扱われてきたそれを、レジィは王から託されてドラゴン退治の現場まで持ってきた。しかし、それは別にレジィのような小さな少年でなくてもよかったはずだった。

「それは、お告げがあったからで」

 淀みなくレジィはサレンスに王様に夢のお告げがあったからと、前にもしたかなり無理のある説明を繰り返す。サレンスは当然ながら納得してはいなかった。

「とにかく、お前の身に万が一のことがあったらレジアスに申し訳が立たないだろう」

 いつになく殊勝な顔でそんなことを言うサレンスに、レジィは胡乱げな視線を送る。

「すごく胡散臭く聞こえるのは何故ですか?」

 疑わしげな少年の言葉に青年は苦笑する。

「少しは信用したらどうだ」
「それは無理です」
「断言しなくても良いだろう。そんなに言うのなら、お前だけでも帰っていいぞ」
「ダメです。サレンス様は野放しにすると何するかわからないです」
「野放しって、お前な……」

 白い閃光が走る。 
 レジィに抗弁しかけたサレンスの声を雷鳴が遮った。
 セツキが驚いたようにびくりと身体を震わせる。
 陽が陰る。 
 思わず二人して空を見上げれば、いつのまにやら分厚い雲がかかり今にも雨が降りそうだった。
 突風がサレンスの長い銀の髪を吹き散らす。

「これは、まさか……」
「まさかって、うわっ」

 再び、雷鳴が鳴り響き、叩きつけるような大粒の雨が降り出す。
 視界が白く閉ざされる。
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