わたしと保健室と彼~4つのお題+α


 やっと二人きりになれたのに。
 先生と話したい事、いっぱいあるのに。

 なんだか胸がムカムカして、あたしは膨れっ面のまま。


「ご機嫌斜めですね?」

「はい。もう、とっても」


 ぷい、とそっぽを向いても、先生は笑みを崩さない。


「それは困りましたね。どうしたら、ご機嫌が直りますか?」

 まるで子供扱い。

 あたしばっかり好きで、あたしばっかり先生でいっぱいで。

 悔しくて仕方ない。

 そりゃ、あたしの片想いだから仕方ないけど――…


 背後の花壇。
 植木がカサカサと音を立てて風に揺れる。

 あたしの身長よりほんの少し高いそれらにすっぽりと隠れて、きっとあたしは周りからは見えない。



「――キス、して下さい」

「……は…?」

「そしたら、機嫌直ります」


 横を向いたまま視線だけ捉えた先生は、驚きに目を瞬いている。

 やがて一思案した後、口を手で隠して溜め息を吐いた。


「……分かりました」

「えっ、いいの!?」


 まさか頷くなんて思ってなかった。

 困らせたくて、ちょっとはあたしの事を考えて欲しくて、言ってしまっただけなのに。

 驚いて正面を向いたあたしと、先生の視界がぶつかる。


「貴女の機嫌が、それで直るなら」


 先生は、柔らかく微笑んだ。

 その優しい瞳に見つめられて、ドキドキと鼓動が高鳴る。


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