わたしと保健室と彼~4つのお題+α


「そうですね…貴女は、女の子じゃない」

 今まさに窓を乗り越えその縁に腰を掛けたあたしに、先生が笑いながら言った。

 でも次の瞬間、また真剣な顔に変わる。

 黒い瞳が、光った。


「――ひゃっ!」


 引っ張られてバランスを崩したあたしを、先生はその腕で受け止めた。

 いつかの、お姫様抱っこのように。


「せ、先生……?」

 戸惑うあたしをよそに、先生はベッド脇のカーテンを背中で潜る。

 ベッドにあたしを下ろす様は、あの時の優しく羽根を抱くようなのとは違って、少し強引に。

 屈めて足の横に突かれた先生の手。
 ベッドが軋む。

 その腕に、閉じ込められた。


 至近距離の、先生の顔。

 見つめられて、きっと今あたし耳まで真っ赤だ。

 忙しない鼓動が、うるさいくらい耳に響いてる。



「貴女は、どうしようもなく女ですよ。私にとって――…」


 囁くように、小さな声で。

 言い切るより早く先生の顔が近づいた。


 ねぇ、それってどういう意味?

 期待しても、いいの……?


 あたしは、静かに瞳を閉じた。



 ――重なる唇。



「…邪魔ですね」


 一瞬唇が離れた隙に呟いた先生の声。
 うっすらと目を開けると、眼鏡を外す先生が見えた。

 指先だけを眼鏡に掛けて。


 その仕草がすごく色っぽくて、あたしは先生の首に腕を回して自分からキスをした。


 不慣れなあたしの、ぶつかるようなキス。

 一瞬後には主導権を奪われて、息も出来ないくらい熱くなる。


「――っ、すきぃ……」


 唇が僅かに離れた隙間に、うわ言のように呟いたあたしの告白は、先生に届いた?



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