僕の唄君の声
(玲視線)


「マジで!」


満面の笑みをこちらに向けながら、嬉しそうにケラケラと笑う奏輔に冷たい視線を投げれば、嫉妬ですかーと間延びした声で問われた。


「なんでそーなる。」


「だって、玲、壱葉ちゃんと話してたりするとき気持ち悪ィくらい優しいじゃん。」


「それとこれがどう繋がるんだよ…」


「好きなんじゃねェの?」


「……はあ。」


「なんでため息なんだよ!」



それもそうだろう。突然の発言、そこにイカれた思考が混ざれば、ため息の1つや2つも零れるに決まっている。



「壱葉は、そんなんじゃねェよ…」


「玲…?」


「好きとか、嫌いとか。付き合うとか付き合わないとか。そういう小せェ次元で壱葉と接しちゃいけねェんだよ。」




確かに、壱葉に愛おしさとかは感じる。
だからこそ、壱葉の恐怖とか過去だとかを消し去れる程「信頼」が出来るやつが傍に居てやるのが1番だと思うんだ。





「俺は、アイツの、傍に居てェんだ。」





言い終えてからフゥと息を吐けば、今までモヤモヤしたような心の突っ掛かりがフッと消えたような気がした。


それから俺たちはお互い口を開く事なく体育館に着いた。コートを覗けば、まだケンちゃんは来ていないようで、各々が練習をしていた。そんなチームの奴らを横目に、ロッカーに行き、着替えてもう一度コートに行けば、俺に気付いた部員が集まりだした。




「遅れて悪ィ!気ィ引き締めてくぞ!」


「「「ッス!!!」」」



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