僕の唄君の声



『ラストー!』

『集中ー!』



遠くから聞こえる部活に燃える人たちの声を聞きながら、東階段へと足を進める。
東階段に近付くに連れ、だんだんと足を進める速度は速くなった。


目的の場所に着き、腰を降ろす寸前。
窓越しに動き回る人影を捉え、降ろしかけていた腰をピタリと止める。



「玲…?」



窓に近付きもう一度ソレを確認すれば、間違いなくソレは玲で。2階部分であるこの場所は、外にいる玲をハッキリと確認できた。


ガラリと窓を開け、風を冷たく感じつつも息を大きく吸った。


「れー……、ん?」


吸った息をそのまま音に変換させようと喉を震わせれば、さっきは気付かなかったが、玲の前に女の子が立っていた。

女の子の顔は耳まで真っ赤で、オドオドしつつもチラチラと真正面の玲を見ていた。


「あー、告白か。」


嫌でも分かるその光景は、悪趣味かもしれないが、暇人にはとってもとっても楽しい暇潰しになった。


「『あの…、榊下さん…!実は…』」


とか勝手にアフレコなんかしちゃったりすれば爆笑モンで。


「『あ゙?早く言えよ。』『えっ…、す、すすすす…』『酢…?』『いえっ、あのす、好きで、』ぶっ!あはははははっ」


やばい、私イタイ子じゃん!でもこれは楽しすぎるね。よし、もう一回やろ。



独り言をかましながら、爆笑して座りこんだ体をもう一度立たせて、窓のふちに手をつきながら外の二人を見た。



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