姫密桜
「痛い」

「ナチ、やめて
 お願い」

那智は、その手を退けた。

彼女は、教室へ戻って行く。

私の頬・・・ジンジンと傷む。

涙が、流れた。

「オリグチって
 あんなに感情を表に出せる
 奴だったんだな
 驚いた・・・

 サクラ、大丈夫か?
 痛いよな」

私の涙に、驚く那智。

「ううん、違う・・・」

決して、痛いから
泣いてるんじゃない。

どんなことをしたって
槇を手に入れたい
 
彼女の気持ちが
私には、痛いほどに
分かる。

彼女のつらい気持ちが
私には分かる。

だけど・・・

「マキだけは渡せない」

渡さない。
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