姫密桜
「お父さん
 この私も打って」

「サクラ・・・」

「サクラ、お前はいい」

「よくないよ
 
 お兄ちゃんと同じように
 この私も打ってください」

お兄ちゃん・・・

その言葉に、二人の別れを
感じた父は優しい声で言う

「痛いぞ
 歯、食い縛れ

 いくぞ」

私は目を閉じ、その痛みに
耐えた。

ズキズキ痛むのは、父に
打たれた傷じゃない。

私の閉じ込めた心・・・
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