HEMLOCK‐ヘムロック‐番外編
「昴、……俺見ちまったんだ。JINさんが俺のその客に煙草売ってるトコ。……アレ、1箱5万すんだよ」
俺は片付けた灰皿を落としてしまった。
「冗談だろ? 聞き間違いじゃないのか?」
「なんか、俺アレ、ヤバい気ぃするよ……」
それから数日後。その日は『ARIA』のシメの日だった。
ホスト達の月の売り上げが発表され、ランクがつけられるのだ。
この日の売り上げは順位に大きく関わってくるので、ホスト達はあの手この手でラストスパートをかける。
俺はこの日、久々に樒と会い、同伴してもらう予定だった。
『昴! キミだよ~覚えてる?
明日シメ日でしょ? キミが強い味方になったげるから同伴しよ♪』
樒とはあの日以来、会うのはまだ2度目なのに声とか顔とか鮮明に覚えている。
あのキスのせいか……
イヤ。
俺と正反対の人間だからだろうか。