HEMLOCK‐ヘムロック‐番外編
「昴~!!」
樒は真っ赤な2000GTに乗って待ち合わせ場所にやって来ていて、俺はビビった。
「コレ昴に♪」
そう言って彼女は俺にスポーツカーのキーを手渡す。
これを受け取ったら今日のシメを待たずに、俺は確実に奨学金を返済出来るだろう。
一体この娘は何者なんだろうか。
「キミ、さすがにコレは……」
「え? いらないの?? 昴ってホント欲が薄いね」
「そうかな」
「でも今日は昴に運転して欲しいなぁ」
「……」
俺は2000GTを走らせた。きっと俺の人生の最初で最後の体験だろう。
「今までどんなカンジだった? あれからメール送っても返って来なかったし、俺嫌われたと思ってたよ」
「大袈裟だなー。昴って可愛いね。」
樒は相変わらずムカつく所もあったが、意外とサバサバした女の子だった。
可愛いなんてあしらわれて、まるで俺のが食い付いてるみたいだ。
彼女と話してると細かい事はどうでもよくなる。
オープンカーで吹きさらしの風がせっかくセットした髪を台無しにしても、気にならない。
「なんかこの間は微妙な別れ方だったからさ。……悪かったなって」