HEMLOCK‐ヘムロック‐番外編
「聖邇!?」
そこに立っていたのは紛れもなく聖邇だった。
「もうじき警察と救急車が来る。俺が上で呼んできた。」
聖邇は手に持ったケータイをこちらに見せた。俺も仁さんもいきなりの聖邇の登場に唖然としていた。
「まさか、聖邇、さっきの事見てたのか?」
「あぁ。仁さんの薬物不正取引の自白とも言える、ヤクザとの会話も、キミちゃんが車で攫われるのも全部な」
聖邇は最初からこの駐車場でのやり取りを傍観していたらしい。
やっぱり仁さんは煙草と称して麻薬か何かを売っていたのだ。
しかも俺や聖邇、店のヤツまでを騙し、巻き込んで。
聖邇から5万円の話を聞いた時からなんとなく感じていたが、現実として受け止めたくなかった。
俺は不都合を避けていたのだ。
「お前!! 最初から知ってたのか? それでここに居たのか? そんで何も止めなかったのかよっ!?」
自分に投げかけるべき言葉を、俺は聖邇に向けた。
「止めなかった。止めてたら結果、誰が警察や救急車を呼べた?」
確かに聖邇の言い分は最もだった。止めてたら今の俺の様な、もしくはもっと酷い状態になってここから出られなかっただろう。
しかし――