HEMLOCK‐ヘムロック‐番外編


「聖邇!?」


 そこに立っていたのは紛れもなく聖邇だった。


「もうじき警察と救急車が来る。俺が上で呼んできた。」


 聖邇は手に持ったケータイをこちらに見せた。俺も仁さんもいきなりの聖邇の登場に唖然としていた。


「まさか、聖邇、さっきの事見てたのか?」

「あぁ。仁さんの薬物不正取引の自白とも言える、ヤクザとの会話も、キミちゃんが車で攫われるのも全部な」


 聖邇は最初からこの駐車場でのやり取りを傍観していたらしい。

 やっぱり仁さんは煙草と称して麻薬か何かを売っていたのだ。
しかも俺や聖邇、店のヤツまでを騙し、巻き込んで。

聖邇から5万円の話を聞いた時からなんとなく感じていたが、現実として受け止めたくなかった。

俺は不都合を避けていたのだ。


「お前!! 最初から知ってたのか? それでここに居たのか? そんで何も止めなかったのかよっ!?」


 自分に投げかけるべき言葉を、俺は聖邇に向けた。


「止めなかった。止めてたら結果、誰が警察や救急車を呼べた?」


 確かに聖邇の言い分は最もだった。止めてたら今の俺の様な、もしくはもっと酷い状態になってここから出られなかっただろう。

 しかし――

< 23 / 33 >

この作品をシェア

pagetop