両手でも足りない
ぎくっ…。

言葉にするならこんな感じ。


いや、実際は目は泳ぎまくるし焦点が定まらない。

鞄を持つ手だって落ちつかないなんてもんじゃない。


「や、やだなー。あとをつけるなんて、ま、まさかぁ!そ、そんなことあるわけないじゃない。自意識過剰だよ、ね。ねー?トモくん!」

やっと出た台詞はカミカミで、ああ…、きっとこんな態度がバレバレなんだってことに、気づくのは数分後。


そんなあからさまな言い訳に、もちろん納得いってないヤツはひとりしかいない。


あたしの前に壁を作る海斗は、不信そうに目を細めて顔を歪ませる。

その顔はまるで…。


本当のことを早く話せ。


そう言っている。


「はは…」

笑ってごまかそうなんて思ってないのに、取り繕うみたいにどうしようもない笑いが零れてしまった。


海斗はそれを見て、すかさず更に怪訝そうに眉を寄せる。


上手い言い訳が見つからない。
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