両手でも足りない
クラスは同じでも登下校は別々、遊ぶこともなくなって。

それから、大きな溝ができてその溝は段々幅を広げて、だんだん深くなっていったんだから。


それを“お前のせい”って。

あれから、海斗はあたしのことを名前で呼ばなくなった。

一緒に遊ばなくなった。

一緒にいることがなくなった。



「…な、なんであたしなの?海斗じゃん、突き放したの。つきまとんなって、迷惑だって言ったのは、海斗でしょ!?」

荒々しい波の音に、負けじと口調が荒くなる。


まくしたてたあたしにびくともしない海斗は、堤防の縁に詰め寄っていきしゃがみ込んだ。


「なに…、してんの?」

人の話を聞こうともしないし、答えてもくれない海斗に少しの苛立ちを覚えた。


「ねえ!聞こえてる?」

返事の代わりにしゃがんだまま首だけ捻り、手招きをしてあたしを呼ぶ。


口があるんだから喋ればいいのに。

深く肩を落として諦めて海斗の傍に寄ると。
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