甘味処[斬殺]
祐樹の体がびくりと震える。

「…やれやれ、だから言っただろう。お前はそんな細かいことを気にしていい存在じゃないんだ」

無表情を、祐樹ではなく正面の虚空に向ける。ゆっくりと目を閉じ、小さな、だが力強い声で言った。

「大丈夫だ」

「サリー…」

祐樹の後頭部に腕を回して、自分の胸に頭を押し付けるようにして抱く。そして、とても近い距離になった祐樹の耳に優しく言葉をかけた。

「お前は、いつか俺が殺してやる。俺が死ぬ前に」

カリカリと頭を掻いて祐樹は笑った。

「…ま、頑張ってね」

嬉しそうに祐樹が浮かべた笑みは、サリーの言葉の内容からすると似つかわしくないように思えた。サリーもそう感じてはいたが、やはり無表情のままで言った。

「言われずとも、だ。お前を殺すまで、俺は死ぬわけにはいかん」

祐樹の髪を優しく撫でて、サリーは続けた。

「お前を一人で死なせはしないさ。お前が死ぬ時は、俺が傍にいてやるから」


祐樹は思い出した。

サリーはいつも無表情で、何を考えているのかわからない。

けれど、僕は知っている。僕と会う時、僕に「殺す」と言う時、サリーが毎回抱いている感情を。
たったひとつだけ、知っている。

「唯一俺を負かしたお前が弱々しく悲しむのが、俺には気に入らないんだ。だから俺は、ずっとお前を好きでいてやる。お前が悲しまずにいられるように」


テレビなんかでは、それは悲しいものとして扱われたりする。僕にはその考え方はよくわからない。


まぁ、何にせよ。


最近の僕にとっては大概、それは心地いいものなのだ。
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